– そっと在るものをかたちに -        ミノワタカハル個展直前インタビュー

Q1. 初個展となる今回、もし展示に込めたテーマや思いがあれば教えてください。

 今回は、低温で焼成した壺を中心に展示しています。茶陶のものを製作するのは初めてですが、力強さを持ちながらどこか品のある作品に仕上がるよう、意識しまし た。低温で焼成することは美しさや物語が残っていると感じています。美しさを丁寧にすくい上げ、もう一度火を通すことで、今の自分の視点で再構成してみたいと思いました。

Q2. ご自身の作品を通して、お客様にどんなことを感じていただけたら嬉しいですか?

 器は、ただ使う道具ではなく、空間や記憶と深く結びついている存在だと思っています。壺や茶碗は今もどこかで静かに人の暮らしに寄り添い続けていて、その役割は決して終わっていない。そうした“続いていくもの”の気配を、作品を通して感じていただけたら嬉しいです。

Q3. 制作において、特に大切にされている“こだわり”はありますか?

 “きれいに整えること”よりも、“自然に残ったもの”を大切にしています。表面に現れる小さなズレや歪み、火の跡やかすれなど、思いがけず現れたものの中に、土や時間との対話が表れると感じています。焼き直すという行為も、そうした痕跡を新しいかたちとして受け入れる手段のひとつです。

Q4. 壺のかたちはすべて手捻りで作られていると伺いました。その際に意識されて いることは?

 手捻りは、自分の手の動きが直接かたちに現れる技法です。リズムや呼吸のような ものがそのまま器のラインに出るので、あえて左右対称にせず、どこか揺らぎのあ るかたちを意識しています。まるで時間をかけてできあがっていくような、穏やか な存在になればと思いながら作っています。

Q5. 作品の質感からは、時間の経過や、少し朽ちたような儚さが伝わってきます。 こうした表現にはどんな想いがありますか?

 完璧なものや新しさだけではない、“低温で焼かれた土”に惹かれるところがあります。少し欠けていたり、表面が擦れていたりすることで、その背景にある時間や記憶が見えてくるような気がします。そうした、静かに風化していくような表現を大切にしています。

Q6. 現代的な表現でありながら、日本の“わびさび”のような空気も感じます。それ は意識されていますか?

特別に意識しているわけではありませんが、自分の中に自然と染みついている感覚かもしれません。完璧でないもの、静けさや余白に魅力を感じることは、日本人誰しもが感じるものではないでしょうか。育ってきた環境で無理に飾らず、そっと在るものを大事にしたいと思っています。

Q7. もし作品がお客様の空間に置かれたとしたら、どんな景色や空気感を生み出してほしいと思いますか?

 ふと視線がとまるような、静かだけれど確かな存在感を持った景色が生まれたらと 思います。壺は空間の雰囲気を変えるような重さを持ち、茶碗や酒器は手に取るたびに、その人の時間にそっと寄り添ってもらえてら嬉しいです。 

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