近年は、手に収まりのよい「ぐい呑型」が主流となり、平盃はやや控えめな存在になりつつあります。
しかし、平盃には、ぐい呑にはない確かな魅力があります。
まず、酒の香りが立ちやすいこと。
口径が広いため、器に注がれた瞬間から立ち上がる香りを、ゆったりと味わうことができます。
日本酒だけでなく、熟成酒や食中酒との相性もよく、酒の表情が一段深く感じられます。
次に、酒の色や揺らぎを楽しめること。
平盃は、液面が広く見えるぶん、光の映り込みや酒のわずかな動きまでが目に入ります。
とくに粉引や志野、焼締など、釉や土味に景色のある作品では、酒と器が一体となった“ひとつの風景”が生まれます。
そして何より、平盃には所作の美があります。
自然と両手で持ち、静かに口へ運ぶ動作は、どこか儀式的で、飲む時間そのものを丁寧にしてくれます。
急がず、量を競わず、味わうための器——それが平盃です。
流行の中では目立たないかもしれません。
けれど、平盃は「酒を飲む器」というより、酒と向き合うための器。
静かな時間を大切にしたい方にこそ、手に取っていただきたい形です。
岸野作品過去作ですが、展観しております



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